こだわらない点は何ですか?
家づくりに取り組む際に「住まいのカルテ」というものをお渡しして、家づくりのご希望を書いてもらうようにしています。その中で「家づくりでこだわらないところを5つ書いてください」という項目があります。この項目に対して何を書いていいかわからないと大抵の方はおっしゃいます。
それはそうですね、今から夢の家づくりが始まるのだから、やりたいことしか考えてないですね。しかし、この5つの「こだわらないところ」が家づくりを進めていく中で最も大事になってくるのです。
というのも、予算や土地に限りがある以上、あふれるばかりの希望をすべて満たすことは難しいのです。身の丈に合った希望を持てるのであればいいのですが、家づくりの経験がない皆さんには至難の技となります。希望だけで事を進めていくと、妥協の産物でしかない「それなりの家づくり」になってしまうので、取り組む前に考えておくにこしたことがありません。そこで、私が推めるこだわらないところを紹介します。
まず「大きさ」です。以前から「小さい家で豊かに暮らす」をテーマに取り組んでいますが、ただ「小さい」ことにこだわっているのではなく、無駄を徹底的に省く取り組みです。「断捨離=だんしゃり」という言葉はご存知でしょうか。必要のないものを断ち、捨てて、執着することから離れるという意味を表す整理法の一つ。家を倉庫化しないということだけでなく、ライフスタイルの価値観をどこに置くかを整理することも重要な目的です。
家づくりを機に、家族だけでなく個人としての目指すライフスタイルに一歩でも近づけるチャンスの時だとも思うのです。
■その他こだわらないところの例
・納戸は持っている大きい物を入れる1帖分だけにする。あとの収納は必要なところに最小限の大きさにする。
・寝室はベッド2つと机が収まる大きさでいい。
・子供室もベッド1つと机が収まる大きさで。
・設備類(便器、浴室)は最新のものでなくても使えればいい。
・玄関は小さくてもいい(靴や傘などの収納は充実したい)
・無駄なスペースは設けない。仕方なく出来たスペースは廊下やPCコーナーや本棚などの用途として利用する。
■逆に実現したいことの例
・無垢板、塗り壁など素材にはこだわりたい。
・外壁はメンテを考えていいものを使いたい。
・断熱材は毎月の光熱費を節約したいので性能が高いものを使いたい。
・縁や庭などゆとりの空間が欲しい。
・家のサイズにぴったりのテーブルやTVボード、座り心地のいい椅子が欲しい。
・LDKはゆったりできる空間にしたい。
以上は、もし私が自宅の建築を考えるのであればの一例です。こだわらないところがあればあるほど、したいことが実現可能になると思っています。
これから家づくりを考えている方、こだわらない点を5つ見つけてみてください。見つかると必ずいい家づくりができますよ。
(「木族」2015年2月号より)