TOP > 国産材コラム > 山林ツアーと節論議・後編 《山林》
(山林 2002.12掲載分) 山林ツアーと節論議・後編
その山を案内していただいた林業家から「節についてどう考えますか」
と問われ、「節をあまり気にしないでと訴えている」と答えると、「あなたも
そうですか。枝打ちや間伐をして節の少ない良材を育てる行為が、ひいて
は健康な山林を整備することにつながるのです。節があっても良しとする
考えが山の手入れを怠ることにつながる」と諭された。
生産者と同じ想いで国産材の利用拡大運動をしているつもりであるが、
育てる立場と、消費する立場が微妙に違っていることに気づかされた。
過去に2~3の林業家からも節については苦言を呈せられたことがあり、必
至で山の手入れをしている林業家なればこそ出る言葉だと解釈している。
しかしながら、過去5年間に間伐しなかった林家が60%を占め、ますます
手入れのされない山が増える傾向にあって「節」を嫌うことを助長すること
が、山の活性化にプラスに働くとは思えないし、「節」云々が山の手入れを
左右しているとも考えられない。
800回のセミナーと現場見学会でも「節」について話しているが、価格面
も含め理解した上で無節を使うのはいいが、節がイコール悪いといった
考えで臨むのはいかがなものかと訴えている。
大概の人は理解を示し、それでも「節」にこだわると答える人は5%程度
に過ぎない。
最後に産地側と見学者の意見交換会を開いたが、鳥取大学の林学を
卒業し奈良県で勤める方から発言があった。実家はやはり鳥取県で林業
を営んでいるが、子供のときから両親から山や木の話など聞いたことが
無く、もっと子供達に山の現実を話すべきであると語った。
平成13年度の林業白書によれば、林家の平均収入が1年前の36万円を
10万円も下げ、26万円であると報告されている。これでは子供達に山の
話をする気にもならないが、後を継がす継がせないはさて置き、せめて
山を語り継ぐことを止めないで欲しい。
それにしても荒廃した山林を一般に公開して下さった勇気に感謝したい。
これほど病んだ山林を目にしたことがなかった。いずれの山も手入れの
行き届いた山林を見せたい心情は同じである。心から山の現状を憂い
てのことである。個人の管理する山であればこう迄ならなかったと思うが、
入会という方法がより荒廃に拍車をかけたのではないだろうか。
愛着のない山持ちは年々増加している。「森林の育成は経済性のみで
成り立つものではない」といった林業家の言葉は重い。