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国産材コラム

今、山からの訴えこそ・・《山林》

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(山林 2003.4掲載分) 今、山からの訴えこそ…

暖かくなればあちこちで環境団体のイベントが繰り広げられる。国産材住宅

推進協会もあらゆるイベントに参加し、山の実績と国産材の利用を呼びかけ

てきた。 昭和60年頃、大阪城公園で毎年行われていた「たべものと暮らし

を変えよう大阪フェスティバル」というイベントがあった。

 使い捨て文化を問い直し、ほんものを大切にする暮らしを目指そうをスローガン

にし、人々が健康で生きられるために森林、川、土、海など自然を愛し、守り、

それらを有効に活用できる暮らしを…、食品添加物、化学肥料など含まない

食品を…、プラスティックより自然のぬくもりある木工品を使おうなど具体的に

打ち出し、それぞれに関連のある100団体が参加する大イベントである。

 参加者10万人を目指すとあれば僅か二日間であっても費やしたエネルギー

は並大抵のものではない。第一回目は延べ25坪のスギ(直径25㎝)のログ

ハウスを二日がかりで建て上げ、抽選で希望者にプレゼントした。

 その後、杉丸太のアスレチック、杉の塔(葉つき)、3mの巨大コマ回しと

続けた。こだわりの食品が各テントに並ぶ中、徹夜で作ったおでん、甘酒、

焼ソバ、水餃子なども販売した。主義主張が明確で、使い捨ての発泡スチ

ロールのお皿などは一切使用禁止で陶器などの食器が指定された。

 一度大バッシングを受けたことがある。市販のフランクフルトを焼いて販売

し、近隣の無添加の食材を販売していた障害者団体から涙の抗議を受けた

のである。

 「食」にこだわる人は「住」にもこだわりを持つことが多いが、「住」にこだわ

る者に「食」への認識が甘かった。平謝りに謝り、意識レベルの低さが露呈

した恥ずかしい想い出が残った。

 又、奈良県のある村からイベント応援でイノシシの「ウリ坊」を連れてきた

ことがある。村で育てたイノシシを「ぼたん肉」としてふるさと便で宅配する

企画があり、その宣伝のための「ウリ坊」であったが、可愛いしぐさに参加

者は大喜びで、それを食べるという発想に結びつけるにはかなりの勇気を

要し「ぼたん肉」のチラシは一枚も日の目を見なかった。「子牛の丸焼き」

などのイベントも出展されているのだが…、なにやら「かわいそうだから木

を切るのを止めて」とどう違うのか、ふと考えさせられた。

 このイベントがなくなって久しいが、最近これほど考え方を前に出した

イベントになかなか巡り合えない。何をテーマにしたイベントなのか判断

がつかず、単なるお祭りに終始しているようで、思想のないイベントほど

つまらないものはないとつくづく想う。

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 二月に滋賀県の林業家を機関誌「木族」の取材で訪ねた折り、珍しく

山の人からイベントの話を伺った。都会の人にも山に目を向けてもらう為

には「関西の水がめを守っている一人として、丸太を担いで御堂筋を歩く

ぐらいのことをやらなあかん」と仲間内で話されているらしい。

 かつて欠陥住宅の追放運動をしていた時に御堂筋を歩いたことがある。

白バイを先導に200人の建築関係、主婦、学生などで大阪城から本町ま

で、首に欠陥住宅のパネルをぶら下げ、「欠陥住宅を撲滅しよう」とシュプ

レヒコールしながら歩いたことを思い出した。

 ご多分に漏れず山は厳しい状況ではあるが、手入れは怠っていない。

今は山を遊ばせてもらっていると言われるだけあって、琵琶湖を一望でき

る頂上に小屋を組まれ、ことあるごとに仲間と集い季節を愛で宴に花を咲

かせておられるとか。今、一番の気がかりは90歳のおじいちゃんが亡くな

った時、物納は利かないし、相続税をどうしようかということらしい。

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 数日後、便りが届いた。『木族の新聞を拝見いたしました。「御堂筋を

デモ行進」のタイトルを大きく載せていただき、どのような反響があるか楽

しみです。私も、あのお話をさせていただくまでは実現不可能なことと想

っていましたが、「やりましょう」というお声を聞き山関係の人にも話をして

います。山林所有者、素材業者、建築関係、環境保護団体など、手を取

り合って国産材の利用促進・環境保全、林業の活性のために、一般の方

に今一度考えてもらうためにも仲間を増やして実現できればと思います』

 滋賀県は環境意識の高い地域である。琵琶湖の水質を守るために

行政と市民団体が手を繋ぎ、合成洗剤の与える環境汚染を訴え、石鹸の

奨励など台所から環境に目を転じさせたところである。

 行動するに遅きはない、他力本願でなく山からの訴えこそ、今、必要

ではないだろうか。

 

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