現在旭区で建築中の木造3階建住宅で、天然砕石による地盤補強を
行った。メリットは地震時の液状化に強く、解体時に土中埋設物として
撤去する必要がないことだ。ただし施工上、支持地盤までの深さは7~8m
が限界だそうだ。
1999年に実施した旧丸ビルの解体工事で、大正9年(1923年)に
施工された松杭の多くが健全な状態で出土し話題になった。それがきっかけと
なり、国が打ち出した木材自給率50%の推進と相まって、大手建設会社の
木杭(松・スギ等)の研究開発が進んでいる。地下水以降には腐朽菌やシロアリが
発生しない為、地下水位の浅い部分のみ粘土でコーティングすることで腐朽を
抑える。木材を使うことで製造時のエネルギーを減らし、炭素貯蔵にもなる。
液状化にも強く、工費も従来のコンクリート杭より安価で、引き抜くにも
さほどエネルギーが掛らないとなれば願ったり叶ったりだ。
20年ほど前の新築工事で、更地であった敷地に、ある筈のないコンクリート
基礎の底盤がそっくり残っていた。中古物件付きの土地を購入され、知人の
工務店に解体を依頼し、完璧な撤去が行われた筈だった。気づいた時には
工務店は消滅し、まずいことに建物が鉄筋コンクリート造だった為、大きな
つけをお施主さんが支払う結果になった。土中埋設は見えないだけに厄介だ。
大災害や問題が発生するたびに建築基準法の見直しが計られ、住宅建築に
於いても年々厳しい規制が定められる。主要部分の10年保証が施工者に
課せられることもあって、軟弱地盤に対しては地盤補強が義務付けられ、
関西では殆どの敷地に鋼管杭やコンクリート杭が打設されている。
ほぼ1m間隔で打ち込む為、基礎面積50㎡程度で40本前後の杭が
埋まる勘定になる。今や地球温暖化防止の観点から長期対応型の住宅に
シフトしているが、建て替えが発生すれば補強杭は地中埋設の厄介物として、
撤去を余儀なくされる。
かつて防蟻処理に最適と推奨され新築の70~80%で使われた
クロルピリホスは2003年にはその毒性から使用禁止となっている。
強いばかりが能ではない。100年先を見据えるなら解体時の環境も
考えての提案でなければならない筈。100年先の子孫にツケを回さない
ためにも木杭の開発・普及は理にかなっている。現場の道路事情も
あるだろうが、それで国産材の利用が拡大されるなら八方良しではない
だろうか。
(「木族」2014年4月号より)