大津波に続いて巨大化した竜巻が関東地方を襲った。鉄筋コンクリートのベタ基礎をひっくり返すほどの脅威を目の当たりにすれば,何を基準に家づくりをすればいいのかと考えさせられる。これも自然の摂理と受け入れるべきだろうか。
国産材の運動を始めて30年になる。戦後の拡大造林で植えた森林が建築用材として使える状態に育ちながら、扱いやすい外材がそのシェアの4分の3を占め、使われないことで森林経営が成り立たず日本の山は危機に陥っている。
話を聞くにつけ、建築士として何をなすべきかと、駆り立てられるように勉強会や講演会で辻説法的活動を続け、住宅づくりを目指す生活者に「国産材を使って」と呼びかけてきた。
しかし、残念ながら人は直接的に自分に降りかかる危機には敏感に反応するが、やがて起きるであろう問題にはいたって緩慢、構っておれないほど何もかもが忙しいのだ。どこの国の木であろうが、今1円でも安ければそちらを選択する。ましてや山の為、林業の為にとなれば益々遠く感じるだろう。先のこと他人のことを考えられるのは本人が豊かであって初めて成り立つことだ。
今まで300件を超えるリフォームを行い、ほとんどの解体現場で外材利用の土台や大引きが、腐朽菌やシロアリの被害を受けている様を見てきた。木材の暴露試験でも立証されているヒノキであれば、ここまでの被害にはならなかったと悔やまれる。
今や住宅の長期耐用化は常識化されつつある。であればその骨格ともいえる構造は国産材にするべきと考える。
人生の半分を掛け新築したあなたの家の土台が、15年足らずで蟻害に遭い構造的ダメージを受けたとすれば余生に心配の種を植え付けることになる。そうならないためにと、防蟻剤にどっぷり浸すのもいかがなものか。今一番普及している外材は北欧材であり、特に湿度も気温も高い関西の地とは気候風土が大きくかけ離れる。山の為でも林業のためでもなく、あなたと大切な家族の為に日本の風土にあった国産材と使うべきだ。結果、美しい森林を未来に繋ぐことになるなら一挙両得となる。
山が先か、あなたが先かだが、間違いなくあなたが先と断言したい。