秋ですね。紅葉を眺めて心癒されたいですね。
さて、最近お客さんと打ち合わせをする機会が頻繁にあるの
ですが、お客さんの住まいに対する情熱に圧倒されます。
一生に一度の大きな買い物で、このために、今後何十年と
ローンを払い続けるプレッシャーと戦い続けなければならない
ことを考えると、当然のことだと思います。
「できる限り嫁の望みを叶えてください」
「子供に何か記念になることがあればしたいのです。」
と、自分の部屋は寝ることさえできればいいので家族が
喜べばと話してくれる旦那さん。自分のことは二の次である
「無償の愛」はとても美しく感じます。こういった家族の終の
棲家を設計できることはとても幸せだと思います。
設計者によって、考え方も趣味も違うので、完成する前の
イメージには少なからず設計者の「色」が出ます。ですので、
お客さんと私の出会いは運命の巡り合わせといってもいいかも
しれません。その託された運命に、施主さんが望むことを満たす
中で、私の個性を活かすことができればと思っています。
以前、有名建築家さんの10年後の住まいの見学会に行った
際に、お施主さんが「私たち家族が仲良く暮らしているのは、
いい家に住んでいることも一つの要因です。家にいれば穏やかな
気持ちになれ、不安や悩みも家に帰れば、小さなことのように
思える」と仰っていました。私も人の精神が安らぐ空間づくりが
できれば最高だなと思いました。
お客さんと設計者が同じ方向を向き、どれだけ楽しんで取り
組めるかが「いい家」づくりの鍵ではないでしょうか。これを
実現するため、私が思っていることは素のままにすべてお伝え
するようにしています。
今度、同時期に2棟の住まいが着工します。お客さんにとって、
設計の打ち合わせという第1章が終わり、実際に作っていくという
第2章が始まります。完成時に一緒に喜んでいただけるように、
身を引き締めて最後まで取り組もうと思います。
ちょっと前にお施主さんに言われたことがあります。
「家が完成すると、また違う家が始まるから、私たちの家のことは
忘れてしまいますよね」と。
私の場合、そんなことはおそらくないといえるでしょう。なぜなら、
業務の一貫として流れ作業のように取り組んでいるわけではなく、
一つ一つの家づくりにおいて思い入れがあり、またお客さんと接する
過程で私自身が学び成長し、今に至っているとひしひし感じるからです。
私自身の成長は家づくりの中から生まれてきています。取り組んだ
すべての家づくりは他と比べることのできない、いわゆる「ひとつだけ
の花」です。
この次も、二つとない花が咲くことを楽しみに家づくりに取り組み
たいと思います。
(「木族」2013年10月号より)