大型台風18号は、嵐山の清流のイメージを見事覆し、水の威力
をまざまざと見せつけた。大阪を代表する淀川にも堤防を乗り越
えんばかりの濁流が押し寄せ、河川敷のあちこちに点在した儚い
生活の証しは、ブルーシートと共に消滅していた。
災害が起きる度その爪痕の大きさに、誰もの頭をよぎる不安は
原発の行方ではないだろうか。
住宅のエネルギー消費のあり方に関心を向け、住宅建築や暮らし
方について提案・アドバイスを行っている野池政宏さんが、
「1985アクション」と名付け、福島原発事故をきっかけにして
「みんなで省エネについて、ちょっと真剣に取り組もう」という呼
びかけをしている。
先ずは、住まい手とつくり手で、小さいエネルギーの暮らしを増や
し、家庭の総エネルギー消費量と電力消費量を2011年の半分に
し、1985年レベルの省エネルギー社会を家庭から構築していこ
うというものだ。
原油、石炭、天然ガスといった1次エネルギーの殆どを輸入に頼り、
自給率4%の日本にとって省エネのウエイトは高い。
現状を振り返れば、産業部門に比べ家庭部門の省エネ行動の遅れが
日本の省エネ削減の負担になっていることは明らかなようだ。
一般に省エネ=節電という認識が強いが、電気のみならず、ガス、
灯油などの消費も抑え、1次エネルギーの消費量を減らすことが目
標だと訴えている。
合わせて、太陽光や風力など自然エネルギーの活用を推進していけ
ば、自ずとCO2削減に繋がり、自給率アップにもなる。経済の停滞
を招くことなく推進できるのは家庭の省エネルギーだと力説している。
省エネを一般に分かり易くし、その意欲を高めるためには省エネの
「見える化」を計ること。庇(ひさし)を1か所、窓を1か所ペアガラス
にすることで電気代が具体的に年間いくら下がるかを計算できる
システムを開発している。
考えればこのアクションも国産材の利用推進運動と同じである。
資本を投じても、企業に働きかけてもおいそれと変わるものでは
ない。国民が私1人くらい、という考えを取り払い、省エネの真の
必要性を理解し、出来ることから始めることではないだろうか。
(「木族」2013年10月号より)