土地探しから住宅建築にかかわるケースが増えている。生活者が不動産屋さんを訪ね、一人で現地案内を受け、決断を下すには荷が重すぎる。
建物に関しては行政も基礎の配筋検査に始まり、上棟後の金物チェック、完成時と段階を追って検査を行う。構造見学会などを積極的に実施し、内容の見える化を図るビルダーも増えている。
ところが土地の判断は、おいそれとはつかない。建築基準法には、敷地にからむ様々な規制が存在する。建ぺい率・容積率以外に日照、道路規制や高さ制限など数えればきりがない。また分譲地には独自の基準が設けられている。
現在、不動産の売買契約時には重要事項説明が義務付けされているが、説明を受けた人が果してどれだけ理解しているかは疑問だ。
よく言う話に、不動産にお買い得はないというが、安価な土地にはそれなりの理由がある。過去に大阪市内の中古住宅付き土地の調査依頼を受けた。安価な価格表示に現地に行けば、RC造地上3階、地下1階が存在し、前面道路も狭く解体費に法外な費用がかかることが分かった。前面の道路幅が建築工事費を左右するなど分かる人も少ない。
先日、15年前に購入したという中古住宅の検査依頼を受けた。敷地そのものが道路面より低いため、床下に雨水が侵入するのか、総ての床下がカビに覆われていた。築年数と建物の傷み具合から想定できる価格を遙かに超え、悪意さえ覚える高値で取引されていた。とりわけ中古住宅の購入には、プロの目が必要になる。売り手側の説明だけでは見えてこないものが多い。
チェックに同行した中古住宅の中には、浴室、キッチンなど設備機器を入れ替え、全室リニューアルを済ませた建物に、破格値が表示されていた。外周を点検して納得した。裏は5mの切り立った崖であり、崖下の家はすでに廃屋化し、犬走りには大きな亀裂が走っていた。瞬間、リフォームの意図が見えた。
慎重に検討しても、思わぬところに落とし穴が潜む。家族構成や暮らし方、目的によっても土地の選び方は変わる。不動産価値としての土地取得ならいざ知らず、長い人生の基盤としての宅地であれば土地のソムリエ的働きをする建築士のアドバイスは不可欠と言えよう。