踊らないのに踊り場、走らないのに犬走り、建築用語は、実際の用途とは異なるものや覚えにくいものがいろいろあります。
入社して間もない頃、柱と梁を繋ぐ「かすがい」がなかなか覚えられず、デカホチキスと勝手に命名し、大工さんに叱られたものでした。棟上げでよく使われる大きな木槌の「かけや」も覚えられず、これもデカハンマーと命名し以下同文です。
昔ながらの道具ならまだしも近年主流の基礎パッキン工法は、「ねこ土台」と言うし「ねこ」は手押しの一輪車も呼ぶし、もう何が根拠やらです。
一方でFIX窓を「ハメ殺し」と言うのは普段使いつつも時代的にそろそろ廃れた方がよろしいのではと密かに思っています。
かなり昔の話ですが、勤めていた設計事務所でお寺の設計があり、トイレを禅宗では何というのかを調べろと言われ、お寺に聞いて回りました。ようやく「東司」という答えが得られ、設計図書に記載したところ、ゼネコンからの質疑で「東司とは何ですか」と聞かれました。ちなみに「とうす」と呼びます。
専門用語は深すぎても浅すぎても意思疎通が難しいです。
(建築士事務所民家・設計部=矢野祐子)
~2025年木族6月号より~