学生時代、有名な設計事務所に入ったり、大きな設計会社やメーカーに入ったりと、設計の仕事にも様々な夢のある方向性がある中で、「中津さぁ、今の時代に建築家になったってしゃあないやろぉ」という言葉を添えて、今の「工務店での住宅設計」という、自身の設計としての方向性を面白がって後押ししてくれたのが吉井先生でした。
それから約10年が経って、そろそろその後の報告をと、先日初めて新築の完成見学会の案内を送りました。
見学会当日、外観を眺めながら一通り設計の経緯やポイントを説明し、間取りをなぞりながら質疑を受け、先生の視線が止まる度に、あれ何か変な所あったかなと、ちょっとドキッとする。素材の使い方、目地の方向、金物の納め方、ここはこうなるよね、こっちはもっと違った表現もあるよね。と建築談義を交えながらの緊張の講評は、気づけばあっという間に3時間が過ぎていました。
しかし本番はここから。今までのなんだか難しい格好いいモノを作りデザインする事の話を「見た目の格好良さや美しさは個人の嗜好の問題だから」とサラリと一蹴して、工務店としての設計の先にあるもの(建築家がつくる作品のような家ではなく、ものを作る過程やその先の関係も含めて)で何ができるかだよね。その可能性が楽しみです。と、遠く、先に繋がる課題を明確に残して頂きました。
確かに、設計においても情報が溢れ、雑誌で見たカッコイイ家を簡単に真似が出来るこの時代に、力を入れるところはそこじゃないよなぁと、さすが先生。工務店だからできる家づくりって何だろう。これから出会う沢山の方と一緒に実現して行きたいと思いました。
(建築士事務所民家・設計部=中津真)
~2025年木族4月号より~