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国産材コラム

全てにドラマあり

朴訥の論

コープ自然派さんと進める「自然の住まい協議会」の会議で、久しぶりに「あかね材」の名前を聞いた。

 

15年前に松阪木材協同組合さんから案内を受け「あかね材」を知った。「スギノアカネトラカミキリによる被害材が見た目がよくないということだけで、低価格の売りづらい市場で流通しています。大学の協力で科学的に検証し、耐久性、強度ともに問題がないことが分かりました。そこで環境に貢献するエコブランドとして関係者に案内しました」とあった。

 

スギノアカネトラカミキリは杉、ヒノキの枯れ枝に産卵し、孵化した幼虫が樹幹内に入り3~10センチ食い進み、再び枯れ枝に戻り成虫となって出ていく。成木になるころには既に存在しない。虫食いや飛び腐れとして各地で苦慮している問題でもある。

 

40~50年をかけ大事に育てた木が、僅か2、3センチの虫にその価値を奪われたとなれば泣くに泣けない。見た目だけの問題であれば柱が壁の中に隠れる大壁仕様であれば何の問題もなく使える。唯一の条件は、ビルダーとお施主さんの理解力の不可欠にある。

 

変色した部分を取り除き家具や玩具などに利用されていたが、平成22年に「あかね材認証機構」を設立し、同じ問題を抱える県(岐阜、愛知、兵庫、奈良、和歌山、鳥取)と連携し、情報の共有を図っているという。主に公共建築物を中心に積極的に利用を促している。

 

衣・食・住あらゆる分野で産地偽証や隠ぺいがまかり通る世の中でマイナスと成りかねない事を公開し、販売促進につなげるには相当の努力を要す。根気よく「あかね材」のPRを続けて欲しい。

 

最近スーパーでも見かけるようになったが、訳アリ商品や、商品ロスを無くそう、棚の手前の商品から撮りましょう、などの呼びかけも生活者の理解を乞う商店主の切実な叫びだろう。

 

先日、テレビで「リサイクルの服にタグをつける」が紹介されていた。リサイクルに出す服のエピソードや想いをタグに描いて展示するというものだ。来場者はそれを読むだけでもその服への愛着を感じ、その人となりも見え楽しいという。もはや服という概念を超え、そこにドラマを見る。

 

あかね材も、家も、また然り、壮大なドラマを有す。

 

(国産材住宅推進協会・代表=北山康子)

~2025年木族2月号より~

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