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国産材コラム

終わりでなく「バトンタッチ」

住い考

経年→味わい深く

最近ホットカーペットを収納に仕舞ったところなのですが、

もう扇風機を出したくなるくらい暑くなってきましたね。

年々、春や秋といった、程よく心地いい季節が短くなって

きてるように思えます。

 

 

さて、ひとつの家づくりが終わろうとしています。ついこの

あいだ、お施主さんとの打ち合わせの記録を全部見直して

いたのですが、第1回が2012年4月16日の日付。

「もう1年も経っているのか」と改めて感じました。

 

月並みですが、長かったようで、あっという間だったように

思います。初めて現地に行った時に敷地の大きさにびっくり

したこと、お客さんといろんなショウルームに行ったこと、

雰囲気のあるお店でごちそうになったこと…この1年間の

家づくりの過程の中、さまざまな思い出ができました。

お施主さんも多くの打ち合わせ、決めごとと、すごく大変だったと

思います。奥様の家に対する情熱、ご主人さんの懐の大きさには

感銘を受け、私自身、学ばせていただいたことが非常に多かった

です。

 

こういったことを経験できるのは、仕事という枠を超えて、私の

今後の人生にとって、とてもプラスになることだとも思います。

もう間もなく完成ですが、これで終わりではなく、お客さんに

家づくりのバトンをお渡しするだけです。どうか楽しく暮らして

いただきたいと思います。

 

ご主人さんには壁のヒノキのにおいを感じながらお風呂で疲れた

体を癒していただき、奥様には、ご自身で造り上げた庭を見ながら

料理を奮っていただければ最高の喜びです。

 

 

「古美(ふるび)ていく」という言葉が好きなのですが、今回

この住まいで利用したフローリングのカラマツ、スギ、洗面所の

ヒノキなど、国産の無垢材は、暮らしていくにつれ、今とはまた

違った色に変化していきます。

 

住まいは劣化していくものではなく、使うにつれて味わい深く

経年変化をします。人が歳を重ねるのと似てるような気もします。

 

今から10年後、このお住まいの変化を楽しみにしています。

同時に私自身も、少しは厚みのある姿をお見せできればいいなと

思っています。奥さんの造り上げる庭も、ひそかに楽しみにしています。

 

また、現場担当者や職人さんにも感謝しています。「良い家を

造りあげる」というベクトルは皆が同じ方向に向けられていたのでは

ないかと思います。

 

少し失礼な表現かもしれませんが、学生時代の文化祭のような充実感が

ありました。

ありがとうございました。

(『木族』2013年6月号より)

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