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国産材コラム

100年を見据えて、暖かく

朴訥の論

気候が定まらず朝夕の寒暖差も大きく、年々温度差が体に堪(こた)えるようです。

 

2月末、24年前に建築士事務所民家で新築をされたお宅からリフォームの相談を受け訪問した。

 

当時はシックハウスがクローズアップされ、まだ温熱環境に対しては一般的に認識も薄かった。今でこそ窓の複層ガラスは当たり前と言えるが、金額が嵩(かさ)む窓ガラスは単板か複層かは、お施主さまの判断にゆだねることが多かった。

 

延べ床面積70坪(240㎡)に石化建材を使用せず、土壁と自然素材に拘(こだわ)った住宅だった。お施主さんも60歳代とお若く、それほど寒い地域でもないため、単板ガラスを選択された。今、24年の時を経て娘さんのご家族がその家を継ぐことになり今回の運びとなった。

 

ところが久しぶりに訪問してその寒さに驚いた。低温床暖房は敷設しているものの南に大きく開いた掃き出し窓の熱の透過損失は大きく、カーテンもなく半年ばかり家を空けておられたこともあってか、室内はかなり冷え込んでいた。

 

冬に起きやすい心筋梗塞や心不全は寒い地域より暖かい地域に起こる率が高いという。寒冷地では寒さ対策に万全を期し、室温も安定していると聞く。

 

高温多湿の関西では家づくりは夏を旨とすべしが根付き、冬季の寒さ対策を軽んじる傾向にあったかもしれない。近年では住環境が健康リスクを左右するとまで言われ、高断熱の住宅と健康の深い関係が立証されている。

 

社会問題になっている認知症も、MRIで脳の健康状態を可視化したところ、暖かい住宅では脳の経年劣化が少なく、1℃暖かい家では2歳若いという調査結果もあったそうだ。

 

室内の温度を一定にすることで脳にダメージを与える血圧の乱降下が少ない等、様々な要因が重なることが脳年齢を若く保つことに繋がるという。

 

あらゆる病の引き金となる高血圧への注意喚起は、塩分の取りすぎや喫煙に栄養バランスなど各所で発信されている。ところが不思議なことに家の中を暖かくしようという呼びかけはあまり聞かない。衣食住で一番遅れているのは住だと言われているが、残念ながら的を射られたようだ。

 

環境変化も目まぐるしい中で、人も家も100年時代と言われる今。それを見越した住まいづくりを目指す必要があり、改めてZEHへの認識を新たにした。

 

自然も国産材も暖かく暮らせてこそ生きる。

 

(国産材住宅推進協会・代表=北山康子)

~2024年木族6月号より~

 

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