体温を超える酷暑が続く中、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。
先日、友人が交通災難にあったと言う。仕事を終え車で帰宅途中、わき道から飛び出した自転車が車の後方に接触し転倒した。大丈夫です、と60歳位の女性は言ったが、通行人が警察に連絡したそうだ。現場聴取は30分を超えたが、聴取を受けたのは車の運転手のみで自転車への聞き取りは一切無く、理不尽さを感じたようだ。
踏切前で時速25キロの走行でもあり、幸い相手に怪我も無く収まったが、警察曰く「例えアタリヤに当てられたとしても車が悪い、そういうことだ」と強調された。罰金は支払ったが、自転車に対しても注意を促す言葉が警察官からあって然るべき、と悔しがった。
何か問題が発生した時、余程のことがない限り、片一方だけに非があることは稀であり、双方に何らかの要因があるものだ。近年の自転車のマナーの悪さも気になるが、電動キックボードの法改正が輪をかけて事故を誘発しないことを願いたい。
話は変わるが、自然素材を多用する建築もまだまだ一般に理解されにくいことが多く、工事契約時に添付する特記事項書の枚数が増えていく。当初A4の用紙1枚だったが、現在は4枚、45項目に及ぶ。殆どが常識的なことを表示しているが、建てる側の常識が一般に通用するとは限らない。
契約に関すること、施工に関すること、木材や塗り壁の注意点。住宅設備機器に関すること等詳細に明記している。
しかし特記事項を何枚重ねても意志の疎通が図れたということにはならない。そこに至るまでには双方に信頼関係が生まれるほどのキャッチボールが必要になる。
私たちは素人だから、は問題が起きた時によく聞く言葉だが、プロもお施主さんの意志が伝わらない以上、良い提案など生まれる筈もない。新築・リフォームに限らず、忖度なしの会話が成り立ってこそ、納得できる結果につながる。
また、一番難しいのは感覚によることが多い。高さ、広さ、音、色合い等々、人は同じ感覚を持ち合わせていない。なおさら、双方に納得のいく確認が求められる。提案はさせていただくが、現在の生活に照らし判断を下すのはお施主さんに他ならない。
お施主さんと施工者はあくまでも対等の立場にあることを、お互い大切にしたい。
(国産材住宅推進協会・代表=北山康子)
~2023年木族8月号より~