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知識を「知恵」に変えたい

気がつけば、建築業界で働き始めて38年が過ぎました。育児で一時期お休みしていたので、実質35年になります。気持ちは新人の頃と変わらないつもりですが、いつの間にかベテランと呼ばれる年数になりました。

「人は自分が通った道しか知らない」と耳にしたことがあります。まさに経験は自分の財産です。住まいは一軒として同じ条件のものはありませんし、建築業界も日進月歩です。どれだけ経験を積んでも、今なお初めて出会うことがあります。

先日、お引き渡しからしばらく経ったお施主様のお宅を訪ね、お茶を頂きながらゆっくりお話しする機会がありました。最近はインターネットで見た内容についてのご質問を受けることが増えた、という話をすると、お施主様が「インターネットで得た情報は知識であって、知恵ではないですね」とおっしゃいました。その一言に、はっとさせられました。

知識はすぐに得られます。しかし、それを生かせるようになるには、経験を重ねて育まれる知恵が必要なのだと、改めて感じました。

一軒の家づくりには、およそ20もの業種の方や職人さんが関わります。私は分からないことや迷うことがあれば、職人さんの意見を聞くようにしています。その道のプロだからです。

一方で、独立して間もない頃、初めてご一緒した工務店の現場監督さんから、こんな言葉をいただきました。「職人の声を大切にするのはいい。でも最後に判断するのは設計さん。職人の経験が、いつも正しいとは限らないからね。」その言葉は今でも心に残っています。

さまざまな情報や専門家の意見に耳を傾けながらも、最後は自分自身で考え、判断する。そして一つひとつの経験を積み重ねることで、知識は少しずつ知恵へと変わっていくのだと思います。これからも学び続け、経験を大切に積み重ねながら、一人でも多くの方の暮らしに役立つ住まいづくりを続けていきたいと思います。

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