物事に「絶対」はなし
国産材の利用推進をするに当たり一番のネックは、新建材に慣れ親しんでいる人にランダムにある節や、時として起こる収縮に伴う隙やヒビをどう理解してもらえるかだった。
床板の節がサンプルと比べ多いと言う方や、杉板の色が黒いと張り替えを要求する方もいて説得に苦慮したこともある。キズや汚れを気にされる方も多く、3カ月後に訪ねたところ、ヒノキの床板を張った玄関から廊下・階段周りにブルーシートが敷き詰められていたことがあった。理由は「ヒノキが日焼けするから」と聞き、面食らった。確かにシートをめくれば真っ白な桧が表れるが・・・木材には経年変化という美しさもある。
セミナーや現場見学会で、木材の長所として調湿性能の良さを伝えている。梅雨時の部屋の湿気を吸収し、冬季の乾燥時には水分を吐き出し一年を通して調湿してくれる。
入居後半年を経過したお施主さんから連絡があり、杉板を張ったにもかかわらず結露がひどいという。早速訪問すれば、雨戸を閉め切り、加湿器をつけっぱなしにしていたため、結露は外部にまで流れていた。木も許容範囲を超えれば水分の吸収は出来ない。反対に乾燥し過ぎる部屋では木は痩せて隙が出やすい。
自然素材は施工する場所によっても左右されやすく、室温、湿度、日射、風通しと全てに反応する。板材然り、塗り壁材然りだ。
厚生労働省によれば、夏の湿度は50~60%、冬の湿度は40~50%が適しているとある。60%を超えればカビやダニが発生しやすく、40%を切るとウイルスが発生し風邪をひきやすいと注意を促している。
長所は使い方を間違えば短所にもなり得ることを分かってほしい。
節についても、これは枝の痕なので多い少ないは当然であり、枯れ枝で生じる抜け節は同じ樹種の枝で埋木を施す。施工後に稀に抜けることもあるが、同じように埋木をする。
自然素材に起こる不具合を、自然素材だからと手をこまねいている訳ではなく、板材の生産者は試行錯誤の微妙な調整を繰り返し、今日に至っている。それでも絶対と言えるものは何一つない。
時々、打ち合わせに同行させていただくが、どのお宅もきれいに整理整頓され感心させられる。訪ねる前日までは散らかっていたと聞けば、何となくホッとする。生活をしていればある程度散らかるのは当たり前であり、仕事を持っていれば尚更のこと。全てに完璧を求めると、どこかに皺寄せが生じるような気がするのだが。





