国産材の家づくり
食べるものについては、その地で育ったものをその地で消費する「地産地消」という考え方が広く知られていますが、それは木材も同じ。今も日本の家は、気候風土に合った日本の木を使うことが一番望ましいと私たちは考えています。
特に関西の蒸し暑い夏は、調湿機能の優れた杉を活かすことで凌ぎやすくなりますし、水と腐朽菌に強いヒノキを土台や水周りに利用することで家の耐久性を高めることになります。
丈夫で長持ちする住まいづくりに国産材は欠かせない存在です。
ここでは、国産材の家づくりについての基礎知識をお伝えします。
特に関西の蒸し暑い夏は、調湿機能の優れた杉を活かすことで凌ぎやすくなりますし、水と腐朽菌に強いヒノキを土台や水周りに利用することで家の耐久性を高めることになります。
丈夫で長持ちする住まいづくりに国産材は欠かせない存在です。
ここでは、国産材の家づくりについての基礎知識をお伝えします。
その1
日本の山がどうなっているか


日本は世界有数の森林大国。国土の67%が森林で、その40%が一本一本手植えされた人工林です。人工林は、植林し、育て、伐採して、また植えるというサイクルを守ることで、今日まで受け継がれてきました。
木は一年ごとに年輪を増やし、その増える量だけで6400万㎥(2022年)あると言われていますが、それは丁度、日本の1年の全木材需要の8000㎥(2023年)の8割にも達しています。
ですが、木材自給率は上がってきたとは言え、2023年で43%。
森林の増加量より伐採量が少ない為、2006年に31億㎥だった森林の蓄積量は年々増え、2022年には55億㎥と膨大な量に達しています。
これ程膨大な蓄積量があるにも関わらず、木材価格の下落、林業従事者の減少及び高齢化などにより、既に伐期を迎えている木々も間伐が進まず使えなくなるなど、実は日本の林業は危機的な状況にあります。
このような状態が続き山が荒廃していくと、土砂災害や洪水の危険性が今より更に上がることになり、国民生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります。
木は一年ごとに年輪を増やし、その増える量だけで6400万㎥(2022年)あると言われていますが、それは丁度、日本の1年の全木材需要の8000㎥(2023年)の8割にも達しています。
ですが、木材自給率は上がってきたとは言え、2023年で43%。
森林の増加量より伐採量が少ない為、2006年に31億㎥だった森林の蓄積量は年々増え、2022年には55億㎥と膨大な量に達しています。
これ程膨大な蓄積量があるにも関わらず、木材価格の下落、林業従事者の減少及び高齢化などにより、既に伐期を迎えている木々も間伐が進まず使えなくなるなど、実は日本の林業は危機的な状況にあります。
このような状態が続き山が荒廃していくと、土砂災害や洪水の危険性が今より更に上がることになり、国民生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります。
その2
国産材はなぜ使われなかったのか


日本では戦後15年程経った頃から急激に森林自給率が下がっていきましたが、国産材の利用に歯止めをかけていた要因としては、まず一般に国産材は高価だというイメージが根強く定着していたことが挙げられます。
(今は外材のホワイトウッドと比較しても、それが良いかどうかは別として、杉などはむしろ安価です)
次に、外材は平坦な地で育っていることが多く素直で加工しやすいのですが、国産材は急峻な山で育つため木に曲がりなどの癖があり、加工技術を要します。
また、外材は大径木から何本もの柱材を木取りするため辺材が多く、乾燥しやすいのですが、国産材は基本的に柱林業と呼ばれ、1本の木の直径から1本の柱を採れるように育てています。
その為、心持ち材が多く、木の中心部分と外周部分の乾燥比率が違うため、乾燥していく過程でひび割れや反りが発生します。
ハウスメーカーや工務店もクレームを嫌い、素直でヒビや割れが生じにくい外材に頼りました。
高度成長期から現在に至るまで、外材を使った家造りが行われ続けたことで、大工・職人も国産材を使うことを疎んじてしまったのです。
日本が誇る木の文化も、山を育てる文化が守られてこそ、それを生かす技術として育まれてきたものです。
このままでは山と共に木の文化も廃れてしまいます。
(今は外材のホワイトウッドと比較しても、それが良いかどうかは別として、杉などはむしろ安価です)
次に、外材は平坦な地で育っていることが多く素直で加工しやすいのですが、国産材は急峻な山で育つため木に曲がりなどの癖があり、加工技術を要します。
また、外材は大径木から何本もの柱材を木取りするため辺材が多く、乾燥しやすいのですが、国産材は基本的に柱林業と呼ばれ、1本の木の直径から1本の柱を採れるように育てています。
その為、心持ち材が多く、木の中心部分と外周部分の乾燥比率が違うため、乾燥していく過程でひび割れや反りが発生します。
ハウスメーカーや工務店もクレームを嫌い、素直でヒビや割れが生じにくい外材に頼りました。
高度成長期から現在に至るまで、外材を使った家造りが行われ続けたことで、大工・職人も国産材を使うことを疎んじてしまったのです。
日本が誇る木の文化も、山を育てる文化が守られてこそ、それを生かす技術として育まれてきたものです。
このままでは山と共に木の文化も廃れてしまいます。
その3
建材に国産材を使うメリットとは


住宅建材として戦後非常に多く使われてきたホワイトウッド(総称・スプルース等)は、上述した通り使いやすさはあるのですが、高温多湿の日本と違う環境で育ったため、蟻と腐朽菌に弱く、建築用材として利用するには防腐や防蟻処理をする必要があります。
これがシックハウス症候群を引き起こす原因のひとつとなり問題となりましたが、そこまでの症状を引き起こさなくとも、心地よく過ごしたい住宅には身体に害を及ぼす素材は出来る限り避けたいもの。
ヒノキは腐朽菌にもシロアリにも強く、建築用材として優れた材として知られていますが、スギの心材も同じく腐朽菌とシロアリに強く、更にスギは調湿性に優れています。
スギもヒノキも長く日本で住宅に使われてきた建材であるからこそ、機能性という点で最もふさわしい材であると言っても過言ではありません。
そして、国産材を使うことは、社会貢献というメリットもあります。
それは人工林を適切に管理し維持することに繋がり、水土保全機能の維持、水質汚染の抑制、生物多様性の保全に繋がり、更には海外の森林伐採量を減らし、輸送による環境負荷減少にも繋がります。
これがシックハウス症候群を引き起こす原因のひとつとなり問題となりましたが、そこまでの症状を引き起こさなくとも、心地よく過ごしたい住宅には身体に害を及ぼす素材は出来る限り避けたいもの。
ヒノキは腐朽菌にもシロアリにも強く、建築用材として優れた材として知られていますが、スギの心材も同じく腐朽菌とシロアリに強く、更にスギは調湿性に優れています。
スギもヒノキも長く日本で住宅に使われてきた建材であるからこそ、機能性という点で最もふさわしい材であると言っても過言ではありません。
そして、国産材を使うことは、社会貢献というメリットもあります。
それは人工林を適切に管理し維持することに繋がり、水土保全機能の維持、水質汚染の抑制、生物多様性の保全に繋がり、更には海外の森林伐採量を減らし、輸送による環境負荷減少にも繋がります。
その4
乾燥方法が材の価値を左右します


山から伐り出したばかりの木材は、多量の水を含んでいます。
伐採の時期や樹種によっても違いますが、スギは乾燥重量の2倍近くの水分を含んでいる場合もあるようです。
特に成長を止めている心材部分は「結合水」として細胞内膣に水分を多く含みます。辺材部分の「自由水」は乾燥しやすいのですが、「結合水」はなかなか抜けません。
ヒノキも心材に30%前後の水分を含みますが、比較的乾燥し易いとされています。
しかしスギにはばらつきがあり、とくに心材部分は水分を抜けにくくする性質があるため乾燥に時間と技術を要します。
木材を生材(グリーン材)のまま使えば、乾燥していく過程で収縮がおき、寸法の狂いや割れを招きます。
よくボルトの緩み等が問題になりますが、これも乾燥が招いた結果です。
木材は適切に乾燥させることで強度が増し、ヤング率(木材のたわみにくさを表す係数)が上がり、腐朽菌の発生が抑えられるのですが、かといって乾燥し過ぎると、木材が収縮し割れや反りが発生したり、空気中の水分を吸い込んで寸法の狂いを生じる為、それも良くありません。
具体的には、機械乾燥の場合は、高温や高圧で短時間乾燥させた材は内部割れを起こしたり強度が落ちる為、中低温乾燥が良いと考えています。
伐採の時期や樹種によっても違いますが、スギは乾燥重量の2倍近くの水分を含んでいる場合もあるようです。
特に成長を止めている心材部分は「結合水」として細胞内膣に水分を多く含みます。辺材部分の「自由水」は乾燥しやすいのですが、「結合水」はなかなか抜けません。
ヒノキも心材に30%前後の水分を含みますが、比較的乾燥し易いとされています。
しかしスギにはばらつきがあり、とくに心材部分は水分を抜けにくくする性質があるため乾燥に時間と技術を要します。
木材を生材(グリーン材)のまま使えば、乾燥していく過程で収縮がおき、寸法の狂いや割れを招きます。
よくボルトの緩み等が問題になりますが、これも乾燥が招いた結果です。
木材は適切に乾燥させることで強度が増し、ヤング率(木材のたわみにくさを表す係数)が上がり、腐朽菌の発生が抑えられるのですが、かといって乾燥し過ぎると、木材が収縮し割れや反りが発生したり、空気中の水分を吸い込んで寸法の狂いを生じる為、それも良くありません。
具体的には、機械乾燥の場合は、高温や高圧で短時間乾燥させた材は内部割れを起こしたり強度が落ちる為、中低温乾燥が良いと考えています。
その5
スギとヒノキの違いと適材適所


ヒノキの辺材(外周部)は白く黄色味を帯び、心材(中心部)はピンク色。
スギの辺材は白く、心材は赤~黒味がかっていて、辺材と心材の色の明暗がわかりやすいのが特徴です。
ヒノキはスギと比べて成長が遅く、年輪の幅が細かく目が詰まっていて、強度的にはヒノキの方が強いと言われ、またヒノキに含まれているα-カジノールやピネンなどのテルペン類(揮発性の精油成分)が 多く含まれているため、それが白蟻や腐朽菌に強い理由ともなっています。
ただ、どの樹種であっても強度(曲げ強さ)は均一ではなく、個体により差があります。
一般的にデータを出す場合、試験体100本ずつ計測しますが、その内の70%はヒノキが強く、30%はスギが強いと出る為、平均値でヒノキの方がスギより硬いと言われています。
ちなみに、辺材と心材では、辺材の方が強度があります。
高さ数十メートルもの樹を支え、踏ん張っているのは外周部分ですから、それだけの強度があるという訳です。梁や桁などの横架材として使う場合は、辺材部分が梁の下端になるように加工することが大切です。
一方、心材については、腐りにくく耐久性に優れているという特徴を持っており、また柔らかい木は冬期には暖かいという利点があり、それぞれが木材としてなくてはならない性質を補っています。
関西は特にヒノキ信仰が根強く残っていますが、ヒノキはスギの1.5倍程の価格になる為、水に強いヒノキを土台や大引き、根太といった床下部分や、水周りに用い、あとはスギ材を利用することで、価格とのバランスを取ることが出来ます。
強度的に荷重のかかる梁や構造材にはそれに耐えうる強いスギ(ヤング率E70以上)を配することで、適材適所に活かすことに繋がります。
スギの辺材は白く、心材は赤~黒味がかっていて、辺材と心材の色の明暗がわかりやすいのが特徴です。
ヒノキはスギと比べて成長が遅く、年輪の幅が細かく目が詰まっていて、強度的にはヒノキの方が強いと言われ、またヒノキに含まれているα-カジノールやピネンなどのテルペン類(揮発性の精油成分)が 多く含まれているため、それが白蟻や腐朽菌に強い理由ともなっています。
ただ、どの樹種であっても強度(曲げ強さ)は均一ではなく、個体により差があります。
一般的にデータを出す場合、試験体100本ずつ計測しますが、その内の70%はヒノキが強く、30%はスギが強いと出る為、平均値でヒノキの方がスギより硬いと言われています。
ちなみに、辺材と心材では、辺材の方が強度があります。
高さ数十メートルもの樹を支え、踏ん張っているのは外周部分ですから、それだけの強度があるという訳です。梁や桁などの横架材として使う場合は、辺材部分が梁の下端になるように加工することが大切です。
一方、心材については、腐りにくく耐久性に優れているという特徴を持っており、また柔らかい木は冬期には暖かいという利点があり、それぞれが木材としてなくてはならない性質を補っています。
関西は特にヒノキ信仰が根強く残っていますが、ヒノキはスギの1.5倍程の価格になる為、水に強いヒノキを土台や大引き、根太といった床下部分や、水周りに用い、あとはスギ材を利用することで、価格とのバランスを取ることが出来ます。
強度的に荷重のかかる梁や構造材にはそれに耐えうる強いスギ(ヤング率E70以上)を配することで、適材適所に活かすことに繋がります。
その6
木の家は室内環境も改善します


木材の調湿性能が優れていることは、一般に知られているところです。
例えば、冬期の木造校舎と鉄筋コンクリート校舎の温度・湿度を比較すると、温湿度が安定している木造校舎の方が風邪やインフルエンザにかかりにくい環境であると言われています。
住宅において、適切な湿度の維持は実はとても重要です。
高湿度の環境が続くとカビの発生を助長し、カビが増殖すればダニも発生し、喘息・アレルギーの要因となってしまいますし、低湿度になれば風邪等のウイルスの活動が活発になることもわかっています。
過去に国産材住宅を建てた方が、毎日湿度計で計測したところ一年を通じて湿度は65%を維持していたとか。
また床をじゅうたんやカーペットから木に変えるだけで、ダニの数は1/4に減ったとの報告もあります。
塗装をしていない無垢の木は静電気を発生させずホコリが少ない為、ダニの温床になりにくい環境を実現してくれます。
例えば、冬期の木造校舎と鉄筋コンクリート校舎の温度・湿度を比較すると、温湿度が安定している木造校舎の方が風邪やインフルエンザにかかりにくい環境であると言われています。
住宅において、適切な湿度の維持は実はとても重要です。
高湿度の環境が続くとカビの発生を助長し、カビが増殖すればダニも発生し、喘息・アレルギーの要因となってしまいますし、低湿度になれば風邪等のウイルスの活動が活発になることもわかっています。
過去に国産材住宅を建てた方が、毎日湿度計で計測したところ一年を通じて湿度は65%を維持していたとか。
また床をじゅうたんやカーペットから木に変えるだけで、ダニの数は1/4に減ったとの報告もあります。
塗装をしていない無垢の木は静電気を発生させずホコリが少ない為、ダニの温床になりにくい環境を実現してくれます。
その7
伝統と革新による
新しい日本の家づくり
新しい日本の家づくり
国産材さえ使えばどんな家でも良いという考えもありますし、それも悪いとは思いませんが、食品の「地産地消」や「安全性」の考え方を家に当てはめると、お金さえ出せばいい家が買えるからそれで良いということではなく、「木を育てた人」「家の設計をする人」「家を建てる人」の想いや考え方に共感し建てた家の方が、思い入れも納得度も高くなり、日本の家づくりの文化を守るという観点でも良いと私たちは考えています。
元来、日本の家は、代々受け継がれた大工技術と、知恵と工夫で、木だけでなく壁材も屋根も自然素材を活かし安全で強い家を建ててきました。
今は様々なメーカーの技術開発の結果、機能性が高い建材や建築手法が数多く生まれています。
それらと自然素材と伝統工法の良さをうまく組み合わせ、皆で新しい日本の家づくり文化を作り上げていければ理想的ですね。
元来、日本の家は、代々受け継がれた大工技術と、知恵と工夫で、木だけでなく壁材も屋根も自然素材を活かし安全で強い家を建ててきました。
今は様々なメーカーの技術開発の結果、機能性が高い建材や建築手法が数多く生まれています。
それらと自然素材と伝統工法の良さをうまく組み合わせ、皆で新しい日本の家づくり文化を作り上げていければ理想的ですね。

