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「住い考」コラムの記事一覧

大前提は「暮らし方」

住い考

いかに便利に、また楽しく

現在家づくりを進めているお客さんとのお話の中で「料理をしながらリビング・ダイニングを見渡せるようにキッチンを配置してほしい」とご要望があり、対面で見通しの良いキッチンの配置を計画しましたところ大変喜んで頂けたのです。

 

その何日か後に、別のお客さん宅の設計プランを考えるにあたって、同じ様に、家族の様子が見渡せる対面のキッチンとして提案したところ、奥様から「料理に集中したいのでキッチンは閉鎖的にしてほしい」とのご要望。しまった、と思いました。

 

ついついキッチンは対面を望まれると思い込んでいたのです。

 

毎日の家事仕事「料理を作る」環境は様々で、キッチンの形式は決まったものではないのです。しっかりとご家族と話し合い「その家族のための暮らし」をどうして形にできるかを考えていかなければいけないのに。

 

また、その他の洗濯、掃除、収納、趣味など、「暮らしをいかに便利にその上楽しいものにできるか」を考える基本的なことを改めて教えられました。

 

今、私の設計趣旨の一つとして、家の中に居場所をより多く作ることをテーマとしています。例えば気軽に腰を掛けられて長居できるスペースをきめ細かく配慮することです。以前にも書かせてもらいましたが、椅子に座って食事をするダイニングに隣接して椅子の高さと合わせた「小上り畳」を設けるのもその一つ。気軽に座れる仕掛けを設けることで、より多くの居場所ができると思っています。

 

今年もたくさんのご家族と出会い「豊かな暮らし」を目指して日々精進していきたいと思います。よろしくお願いします。

 

(「木族」2016年2月号より)

窓をできるだけ我慢

住い考

必要なところに必要な大きさ

 

今年もあと1カ月で終わりです。何の大きな変化もなく、あっという間に過ぎていったような。年々そんな感じがします。インドアな私ですが、冬になると、より外出するのが億劫になります。

 

 

そこで今回「居心地のいい空間とは」という話をさせていただきます。

 

居心地のいい空間とは、日当たりが良く明るく、風が通る空間とお答えする方が多いでしょう。ただ、居心地とは体感だけでなく、精神的な落ち着きも必要になります。

 

光や風を十分に取り入れるには当然窓をできるだけ多く取り入れることになりますが、窓を大きく、多く設ければプライバシーが保護されにくくなることを忘れてはいけません。隣との窓の位置をずらしたり、カーテンやブラインドなどで室内が見えないようにしても、住まわれている人自身、意識せずにはいられないものなのです。

 

無駄な窓や不必要に大きな窓を設けないことも大事。「小さい家で豊かに暮らす」と同じ原理で、無闇に窓を作るのではなく、必要なところに必要な大きさで、が基本。

 

 

考え方として窓よりも壁への意識を大事にしたいものです。壁があるとモノが置けるし、背をもたせられる。壁に反射する間接光もいいもの。壁で光をうまく受け止める。割合として壁3:窓1くらいで。どれだけ窓を我慢し、壁を設けるかがポイントでしょうか?風も入り、日当たりも良くてプライベートな空間も守られる、これこそが居心地のいい空間でしょう。

 

窓は目線が通るところに設けるのがセオリーと考えています。南のリビングに無造作に大きな窓を並べるのは疑問です。

 

家づくりにおいて、皆様も無駄なものを探してみてください。

 

(「木族」2015年12月号より)

立ち・座りの負担考え

住い考

「高さ」の設定も大事です

暑い夏も終わり、少し風が心地よい季節になってきました。今年は紅葉を見に行きたいなと思っています。今回は室内の段差についてのお話。

 

バリアフリーという言葉があるように、皆さまは床の段差をなくすことについては意識が高いことでしょうが、小さなお子様をもつ家族にとっては、毎日の生活で立つ・座るという動作の軽減も重要と思います。

 

立った状態から床に座るとき、お尻から床までの距離は約80センチ。これだけ差があると、特に小さなお子様をもつ奥様は気軽に座ることは難しいのでは。運動不足の私などは年々ぎっくり腰が怖くて、腰をおろすことに毎回恐怖を感じます。

 

できるだけ腰に負担の掛らないよう、しゃがむ距離を縮めるため、床から40センチくらいの高さに腰を掛けられるアイテムを設ける方法があります。

 

たとえば、リビングに隣接して畳の間を設けた場合、畳は当然座って利用します。フローリングと同じ高さの畳に座るとなると結構気合いを入れないと座れないので、あえて畳の高さを40センチ上げ、フローリングの床との間に中間的な高さを造るのです。これが最近流行りの、小上がり畳です。

 

これによって気軽に畳に座ることもでき、リビングのソファーの大きい版としての利用もできます。椅子と同じ高さなので目線が揃い、ダイニングにいる家族とも会話しやすく、寝ころびながら楽にTVが見られます(行儀が悪い?…笑)

 

家族が集うリビング、ダイニング、キッチンで「立つ、座る」ことを考えて高さを設定すれば、より居心地の良い空間になると考えています。

 

(「木族」2015年10月号より)

広さより質を求め

住い考

空間に「プラスα」

やっとこさ梅雨が明けました。それでも湿気の多い日が続く日本の夏。クーラーを使わず風通しによって過ごせる家づくりを日々施行錯誤しています。

断熱や気密など一般の方の意識も高くなって、昔と比べ、ずいぶん室内の温熱環境が改善されてきました。ただ、反動として、樹脂サッシや質の高いガラスなどを使うことでコスト高になり、予算に合わせるのが至難の業になりがちです。

 

以前からお話していますが、面積を大きくすれば大きさに引っ張られ、質を下げざるをえません。大きさをとるか質を取るか、私の持論ではやはり質を取ることが賢明だと考えます。大きな空間に雑多にものを配置させるのでなく、とことん無駄を省き収納や家具までも細部まで検討してそれぞれの居場所まで考えることで、住まいは小さくても快適な暮らしが得られると思うのです。

 

「居場所」って?

 

家族の共有の場だけでなく、家族の気配を感じながらも、一人になりたいときには「籠れる」ような空間が「居場所」かと思います。これは大きさに依存しません。

居場所を造るにあたって、当然、素材や風や光といった自然環境により、居心地がいいことが絶対条件で、その空間を少し工夫することによって真に居心地のいい場所へとなりうるのです。

 

 

以前、借景のいいところに縁を設けたことがあります。屋根をつけた上で、座ることができる肘掛手すりもしつらえました。ゆったりと座り、雨の日も長時間そこでくつろげます。

空間に何かをプラスすることで、たちまち居心地がよくなる。この「かゆいところに手の届く仕掛け」をどれだけ作れるかで、いい家になるかどうかが決まってくるのかなと思います。

 

最近いろんな方が設計している住まいの見学会に参加していますが、「ここに座って外を眺めたらくつろげるな」「奥さんの居場所はここだろうな」とか施主さんのライフスタイルが見える家に会うとうれしく感じます。

 

そんな家づくりのために、建築士も施主様も断捨離的なライフスタイルの整理が必要ではないでしょうか。

 

(「木族」2015年8月号より)

将来も見据えてプラン

住い考

リスクを恐れず提案したい

もう半袖でも暑いと感じるようになりました。季節が変わるのが早いと感じるのは私だけでしょうか。

 

最近、年をとったなとしみじみ感じます。昔は持論がきつ過ぎて、自分の考えがすべてというところがあったような気がします。自分を持つことはとてもいいことだと思うのですが、それを受け止めて、許し、尊重してくれる人がいるということをどれだけ認識してたか…。なんて今になって考えることがあります。

家づくりにおいても、自分の目指す家づくりの理想を持つことは当然必要と思いますが、その前提の上で、それを主張するのみならず、お施主さんが望むことを満たす引き出しを持っておくことが重要。満たすだけでなく、プロとしての付加価値をつけて提供する。それがよりいい家づくりになるように思います。最近、友人のプランニングの例について聞く機会がありました。

 

ご夫婦と、30代の子供2人の家づくりで、それほど面積に余裕がなく、子供室2部屋を造るとご夫婦がゆったりできる空間がとれないのです。友人は、ご夫婦の将来のこと=お子さんが自立すること=を考えて子供部屋を可動式にすることを提案。ただ可動となると多少音が漏れる部屋になります。音の漏れない壁にしてほしいとのお子さんからの要望に友人は「NO」と返答しました。

 

しっかりとした壁を設けると、将来ご夫婦2人になったとして、個室が並んだ部屋だけが残り、ゆったりとした空間はとれません。またまたリフォームとなるとそれなりの費用もかかります。

私は以上の話から建築士の意気を感じました。

 

誤解を恐れずにいうと、設計するにあたって深く踏み込まず、望まれる内容に沿って決めごとを行うほうが当然リスクも少なくなります。しかし出来上がる建物は「それなり」でしかないでしょう。

 

ご家族の生活に正面から取り組み、今後のライフスタイルまでも一緒に考え、提案する。それが「いい家づくり」につながると考えます。あたりさわりのないプランニングだけでなく、少しおせっかいな提案も必要ではないでしょうか。

 

(「木族」2015年6月号より)

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